類は友を呼ぶ Gleich und gleich gesellt sich gern. / 紙に水彩 (2024)
見どころ① ウィーン幻想シュールレアリスム派の継承者、宮﨑智晴による植物画の世界
宮﨑智晴は、牛島義弘氏に師事し、ウィーン幻想シュールレアリスム派の流れを汲むアーティストです。 ウィーン幻想シュールレアリスム派は、第二次世界大戦後にウィーン美術学校のギュータースロー教授のもとに集まった5人の若い画家たち(ルドルフ・ハウズナー、ヴォルフガング・フッター、アリク・ブラウアー、アントン・レームデン、エルンスト・フックス)により出現した一派で、ウィーン世紀末芸術やシュールレリスム幻想絵画の系譜を受け継ぐものです。
日本では、ルドルフ・ハウズナーに師事した牛島義弘氏が中心となり活動が拡がりました。 宮﨑氏は牛島氏の教えを受け、マックス・デルナーによりまとめられウィーン幻想派により戦後に復刻された、欧州の「古典絵画技法」の「混合技法」を探究しながら独自の様式美を追求し、絵画世界を開拓しています。
「混合技法」を用いた制作は、紙、板、キャンバス、硝子など様々な素材の支持体に、細い筆やペンを使い、点や線を重ねて描いていきます。職人のように非常に根気のいる作業ですが、一筆一筆何層にも塗り重ねられた質感は、様々な色の糸が何層にも重なった織物のようで「絵肌が光に当たる時、宝石のような質感や、時間の深みを感じさせる色を我々に見せてくれる」(宮﨑)のです。
幣廊での個展は昨年の「屈折率」展に続き2回目です。今展では、「植物」をテーマに、人類と植物の関係性について歴史的視点を織り交ぜながら制作していただきました。 時代背景から見ると、世紀末、大戦後と、シュールレアリスム運動は時代の変動期に隆盛を繰り返してきました。それは、支配している既存の理性や理念を取り払い、内面を見つめ直すことにより、大きく損なわれた人間性をあらためて問い直し回復させる運動でもあります。
一方で、今展のテーマである植物は、昔、人々が植物を通して未踏の世界を夢想したように、人類と植物との文化の文脈は様々な変容を続けながら脈々と続いています。 自身を壮大な美術のバトンリレーの一人として位置付ける宮﨑氏は、北宋絵画や初期ルネサンス、北方ルネサンスなど幅広い絵画の知見に古代の神話や思想家の言葉を乗せて、幻想的に変容した植物画の世界を造り出します。一筆一筆置くことで丹念に紡ぎ出された質感は永きにわたる美の営みの結晶です。その美しさの中にある、わたしたちの内面に深く訴えかける結晶を探しに、唯一無二の植物絵画の世界をご堪能ください。 出品作品は販売いたします。 また、宮﨑氏オリジナルデザインの文具類も販売いたします。 ご来廊を心よりお待ちしております。
チューリップ紋 / 紙にインク (2021)
「わたしの植物誌」について(宮﨑智晴)
思い返せば「花」は20年前、尊敬する師から「こういう絵をもっと描きなさい」と言われた題材でした。
「良い絵だ。宮﨑くんは人物より花を描いたほうが向いていると思う」と初めて本気で褒められたのでとても嬉しかったのですが、物語性のある人物画が好きだったこともあり、その後も花の絵はたまに描くくらいで、大半の題材は人物でした。
今回、会場となるギャラリーオーナーの黒田さんから「わたしの植物誌」というテーマを選んで勧めて頂いた事でどっぷり花、植物を向き合いました。 私はウィーン幻想シュールレアリズムの流れを汲んでいます。
自分がこれまで大切にしてきた「時間」を意識した質感表現、過去の名作を下敷きとした構図、物語性、装飾性を大切に制作しております。 絵を読み解く遊びと共に自由に観て楽しんで頂ければ幸いです。
宮﨑智晴
Miyazaki Tomoharu
1980年 山口県宇部市に生まれる
2000年 牛島義弘(1947~2010)にマックス・デルナー提唱「混合技法」を師事する
京都 個展 駒井博士邸宅(重要文化財)
2001年 大阪 個展 ギャラリーアンピオ 近松門左衛門「堀川波鼓」ドイツ語訳版書籍の挿絵制作を依頼される
2005年 ウィーン 個展 シューベルト氏のサロン
2006年 名古屋 個展 佐橋美術店
2008年 「デルナーの伝承展」に参加 オーストリア・ウィーン市の日本大使館主催
2009年 ドイツを周遊、古典絵画研究と風景画取材 チュニジア・ナブールにて陶板画制作(2014年迄毎年訪問)
2010年 京都 アートフェア出品
2012年 京都 個展 MAEDA HIROMI ART GALLERY イッセイ・ミヤケグループ「ズッカ」東京・パリでのコレクション室内装飾製作協力
2019年 東京 招待出品「若手作家10人選抜展」 銀座洋画商組合ホール
2020年 大阪 個展 「路地裏のアトリエ」 乙女屋(出張アトリエとして内装も設える)
2022年 京都 個展 「ICON」KAHO GALLERY
2023年 東京 個展 「花を尋ぬ」Luft alt
鎌倉 個展 「屈折率」Quadrivium Ostium
京都 参加 「デルナーの伝承展」
大阪 個展 「à la carte」乙女屋
2024年 福岡 個展 「古典絵画の深淵」望雲
大阪 個展 「個展技法との対話」大阪牧方市主催企画 牧方氏市民ギャラリー
東京 個展 「五月の夜想曲」Luft alt 京都 参加 「デルナーの伝承展」20回(最終回)
〔賞歴〕 自由美術家協会展「佳作賞」(2002年)
ベルリン大学図書館(ドイツ)、ウィーン大学(オーストリア)、京都大学医学部附属病院(京都)、財団法人近松記念館(兵庫)ほか
上記の他に個展、グループ展、アンティークショップや古書店を会場とした企画展多数。肖像画並びに各種制作依頼、装丁挿絵、イベント美術、パッケージデザインも手掛ける。印刷工房Harekoubousha運営、オリジナルの文具類を販売。
「自己を過去に投入する悦びが、期せずして、自己を形成する所以(手段)となっていた」 小林秀雄
古典絵画に宿る質感と職人の技を雛形とし「自己を形成する表現手段」として古典絵画技法を取り入れる。
紙や板、硝子に卵で練ったテンペラ絵具層と油樹脂絵具を薄く溶いた(ラズール)ニス層を交互に重ねてドローイングを制作する。
北宋絵画、初期ルネサンス、北方ルネサンス、そして、ウィーン幻想派の作家たちが主な私の「師」である。
彼らの作品と対話し、現代を生きる私自身の質感を追求している。
常に意識している事柄は、制作時の一秒一秒を「結晶化」させること。小さくてもひとつの様式美を確立すること。
一過性の表現ではなく、自身を壮大な美術のバトンリレーの一人として、未来に引き継がれる仕事を残そうと願い制作している。
見どころ② Yurariのフラワーアーティスト高橋静恵氏とのコラボレーション:会場を装花で覆い独自の植物世界を体感
高橋氏が造り上げる空間とともに植物画の世界をご堪能ください。
店舗を持たずにマルシェやワークショップ、ブライダルや展示会、店舗のディスプレイなどに取り込む。
日常の何気ない風景を彩る花や植物の葉や実などを取り入れてどこかノスタルジックな雰囲気のアレンジに定評がある。
「宮﨑智晴さんの独自の植物世界を、まるで森に迷い込んだような装花で表現します。」
(高橋静恵)
イベントのお知らせ クロストーク【宮﨑智晴×高橋静恵】10月5日(土)開催!
10月3日(木)から10月15日(火)の期間中、10月5日(土)には、会場の装花をしてくださる高橋静恵氏をゲストスピーカーとしてお招きし、トークショーを行います。異なる分野で活躍する両氏の植物への思いや創作についてお話しいただきます。また、トークショーの後はレセプション・パーティーを開催いたします。
開催日時:10月5日(土)
14:00~17:00
開催会場:ギャラリーQuadrivium Ostium
参加費:無料
◇スピーカー:宮﨑智晴(アーティスト)
◇ゲストスピーカー:高橋静恵(フラワーアーティスト)
ファシリテーター:黒田幸代(Quadrivium Ostiumオーナー)
・お申込み先メールアドレス s.kuroda@quadriviumostium.com (担当:黒田)
トークショーの後、ささやかなパーティーを開きます。パーティーのみのご参加も可能です。
作家とのご歓談と作品鑑賞をお楽しみください。