時/空のアナザーリアリティに触れる。山根晋写真展「杳々たり」2024年9月5日(木)~9月17日(火)

《臨海#014》

写真展「杳々たり」について(山根晋)
《臨海#002》

本展のタイトルである「杳々(ようよう)たり」とは、空海の記述に見つけた言葉です。意味としては、遥かなさま、遠いさま、暗くてよく分からないさまを言うようですが、私としてはその意味もさることながら、「ようよう」という言葉の音の単純な響きに独特の質感を覚えました。

今回のQuadrivium Ostiumでの個展は、海の波打ち際のみを撮影した新作シリーズ《臨海》を初展示いたします。私が芸術に生きるきっかけとなった海、海辺という時/空は、いまだに私にとっての芸術可能性が生起する時/空で在り続けています。

ある日の早朝、波打ち際に茫然と視線を向けていると、この領域に起こる現象全体に神聖な何かと同種のものを感得したのです。当初それは形や質量を伴ったものではなく、ただ純粋な光でしかなく。かつまったくの無音でした。しかし、その神聖な何かを写真機が捉えるアナザーリアリティのなかで捉えようと撮影を重ねていくと、徐々にそれが「杳々たり」として顕れてきたのです。

本展開催の縁は、古美術を収集するオーナー黒田氏との出逢いにおいて、遠く遥かな、厚みのある”時間”について憧憬を交わしたところにあります。私はそのことを黒田氏の古美術コレクションの影を撮ることで直接的に表現をしました。それが、もう一つの新作シリーズ《Past Figure》になります。そしてこれもまた、私のなかでは「杳々たり」とした何かなのです。

作品ステートメント(山根晋)
《臨海#012》

《臨海》※海の淵を撮ったシリーズ

海の淵、波打ち際には、寄せては返すを繰り返す永劫の時間がある。そこに写真機を介して身体を置き、瞬間を捉えるとも時間を止めるとも言われる写真行為を信じ、全身を懸けていく。波に為り、水に為り、風に為り、砂に為り、泡に為り、音に為り、海に為る。

《Past Figure#001》ストゥッコ青年像

《Past Figure#003》木彫祈祷像

《Past Figure》※古美術の影を撮ったシリーズ

ジャコメッティの作品が落とす影。彫刻自体とは全く異なる像、存在が空間に伸びている。そこから、私のなかでそうした影への憧憬が始まった。機は熟し、古美術に対象を絞り、その影の撮影を試みた。そこには過去という時間が、ある平面的な黒淡い塊となり落ちていた。

作家近影

山根 晋

Shin Yamane

1985 兵庫県生まれ

大学卒業後、出版社での営業・企画編集職を経験。その後大工や林業の仕事を経て、独学で映像制作業を始める。2016年頃から本格的に作品制作を開始。

作品の形式はプロジェクト / サブジェクトごと多岐にわたる。近年の主な活動としては、静謐な白磁作品で知られる陶芸家の黒田泰蔵氏の作品を撮影した写真集『A day in February with light』(森岡書店刊)の刊行。白磁を媒介とした光と時間の移ろいを記録するというコンセプチャルな内容が話題となる。
その写真から構成した展覧会を、書店・ギャラリー・禅寺と異なるスペースで複数回開催する。

また、旧ダムタイプのメンバーも参加するパフォーミング・アーツのコレクティブ SC∀L∃R(スカラー)では、映像プロジェクションを担当。2022年には、東京・名古屋・神奈川の3公演をそれぞれ別々の演出で興行する。

2024 年の1月、佐賀県白石町で開催された「第二回 しろいし緑の芸術祭」に招聘され、《深記憶録-空間- 佐賀白石》を制作発表。町民110名の古い記憶をインタビューした音声と写真からなるインスタレーションが、地元の大社である稲佐神社にて常設展示となっている。

[主な活動歴]

2018年 
上映《南インド、タラブックスの印刷工房の1日》奈良県立図書情報館、奈良 / 恵文社一乗寺店、京都 / 足利市立美術館、栃木 など

2020年 
アーティスト・イン・レジデンス+個展《隱身瞞風 Hide and Trick the Wind》總爺藝文中心、台湾

2021年
写真集 黒田泰蔵作品集『A day in February with light』(森岡書店刊行)
個展 「遷す、ENTO/MEIPIN」GOTTA九段下、東京

2022年
個展「ARTS&CRAFTS KAMAKURA 山根晋写真展」浄智寺、神奈川
パフォーマンス公演「SC∀L∃R 齢instar01」東京芸術センター、東京
パフォーマンス公演「SC∀L∃R 齢instar02」PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA、愛知
パフォーマンス公演「SC∀L∃R 齢instar03」浄智寺、神奈川

2023年
企画展「オープンハウスをつくる」雪ノ下の家、神奈川

2024年
芸術祭招聘《深記憶録-空間- 佐賀白石》稲佐神社、佐賀
個展「石ishi 見えるものによって見えないものが見えてきて、見えないものによって見えるものが見えてくる」GOTTA九段下、東京

イベントのご案内【山根晋×青木萌】トークショー「跳躍する魂 ~素手で触れる藝術とは~」&レセプション・パーティーを開催! 

9月5日(木)から9月17日(火)の期間中、9月7日(土)には、詩人の青木萌(あおき もゆ)氏をゲストスピーカーとしてお招きし、トークショーを行います。また、トークショーの後はレセプション・パーティーを開催いたします。

【イベント概要】

開催日時:9月7日(土) 14:00~17:00
開催会場:ギャラリーQuadrivium Ostium
参加費:無料

■トークショー:14:00~15:00 【事前申し込み制・先着20名】

◇スピーカー:山根晋(アーティスト)
◇ゲストスピーカー:青木萌(詩人)(敬称略)

ゲストスピーカーのご紹介
ゲストスピーカーの青木萌氏は、言葉と様々なメディアを掛け合わせ独自の表現を追求する詩人・美術作家です。青木氏によれば、詩歌とは本来、日常や実用の中に伴う、私たちに最も近しい美的感覚の顕れとしての藝術であるとされます。今回の対談では、詩と写真という異なるジャンルに携わるお二人に、現代社会を反映させた広義な意味の藝術について対談していただきます。

イメージ写真

イメージ画像

[青木萌(あおき もゆ)]
詩人・美術作家。言語と記号の問題を主題に、詩と美術作品を制作している。詩とは言語以前、記号以前に在るものと考えており、それを形にするため言語による表現のみならず、ペインティングやドローイング、写真表現も「非言語の詩」と捉え創作活動を行ってい。
[主な活動歴]

展覧会
2022年 個展「ドロップス」 新宿眼科画廊
2023年 個展「ドロップス ふたつ」 茂 | 呂(もろ)

出版物
2022年 詩集 「ドロップス」 メブキ刊行 ISBN 978-4-9911522-0-7

[トークショーのお申込み方法]

下記のメールアドレス宛に、件名「トークショー参加希望」、本文に「お名前」「当日のご連絡先」をご記載の上お送りください。折り返しメールで返信いたします。なお、複数人数でお申込みの場合は連名の上お申し込みください。定員に達した時点で締め切ります。あらかじめご了承ください。

・お申込み先メールアドレス    s.kuroda@quadriviumostium.com (担当:黒田)

レセプション・パーティー:15:00~17:00 【予約不要・出入り自由】

トークショーの後、ささやかなパーティーを開きます。パーティーのみのご参加も可能です。
作家とのご歓談と作品鑑賞をお楽しみください。

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)  Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com
【展覧会期間中:予約不要・ 展覧会期間以外は予約制】
水曜定休・ほか不定休 営業時間 11:00〜17:00

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)
Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com
【展覧会期間中:予約不要・展覧会期間以外は予約制】
水曜定休・ほか不定休 営業時間 11:00〜17:00