間隔にあるパラダイム #002, 2023
2 digital prints,2 wood flames,2 photo mounts
2300×655mm(each 892×652mm)or1160×390mm(each 528×390mm)
©Masahito Koshinaka
本展覧会の見どころ
画一化が進む現代社会においては、多様な選択の余地が失われ、我々はなんとなく居心地の悪さや違和感を本能的に感じています。そしてそれは、ある事象に対面する際に表出し疑義を提示し問いかけます。
「剥製 パラダイム」展の作品は、実際に起こっている剥製を取り巻くこのような事象をテーマに、観る者に問いかけます。
剥製は生命を奪われた生命体として「不在」でありながら、人間の剥製を所有するという風習やステイタスとしてのパラダイムにより加工を施され存在するという歪みを孕んでいます。
しかし、時代の流れにより、暮らしのなかでの剥製文化が衰退するに伴い、そのパラダイムが終焉を迎え「剥製を処分する」という現実に対峙することで、画一的な枠が外れて、見失われている人間本来の根源的な要素が顕にされます。
作品は、2枚の写真で構成されます。一枚は、白い壁に向い合せて剥製を置き撮影されたもの、もう一枚は、剥製はそのままの位置でプロジェクターで海の風景を映して撮影したものです。
「剥製 パラダイム」作品のシリーズは、亡き存在としての剥製の「実像」と、海に向かって佇むという意思を感じさせることで「見立ての生命」を与えた「虚像」とを平行に見せることで、剥製が担っていたひとつのパラダイムが終焉したその先の、言語化できないエクリチュールを体感する「劇場」として作用します。
間隔にあるパラダイム #003, 2023
2 digital prints,2 wood flames,2 photo mounts
2300×655mm(each 892×652mm)or1160×390mm(each 528×390mm)
©Masahito Koshinaka
「剥製 パラダイム」展について(越中正人)
私の祖父の家を解体する際に見つかった剥製、その行方を考えることからこの写真シリーズは始まりました。越中正人「剥製パラダイム」展では、全国から集めた剥製を通じて、時代と共に変わりゆく「価値」と「存在」について探求を目指します。
かつて床の間を飾っていた剥製は、今は処分に困る人が増えています。傷んでいる剥製は燃えるゴミとして処分したが、傷んでいないものはゴミに出せないから誰かにもらって欲しいという人が多くいました。そこには生命の残滓を感じて捨てられないような、八百万の神やアニミズムに通じる日本人特有の感覚を感じずにはいられません。現代社会における剥製は、燃えるゴミと神性の間、ある種の狭間に位置していると言えるでしょう。
プロジェクターを用いて海を背景にした剥製は、まるで生きているかのように海を見つめる姿を写し出されます。しかし、光が消えれば、それはただの剥製に戻ります。この2つの状態を対比させることで、時間の経過とともに変化する心情を表現し、観る者にありもしないドラマを想起させます。
この写真作品シリーズは観る者の内にありもしない生命とドラマを生み出した瞬間を体感できるシステムとなり、剥製というかつて生命を持っていた存在が、今の時代においてどのような意味を持つのか、そしてそれが私たちの感情を揺れ動かした根源を表します。そして、この展覧会は日本の伝統的な感覚と現代社会の価値観が交錯する場になります。
間隔にあるパラダイム #017, 2024
2 digital prints,2 wood flames,2 photo mounts
2300×655mm(each 892×652mm)or1160×390mm(each 528×390mm)
©Masahito Koshinaka
越中正人 ステートメント
越中正人はこれまで「集合(集団)」と「個(個人)」の関係性に注目し、偶然または必然によって集まった「個」の集合の中においての存在意義や相互作用について、人、花、火、火星など、さまざまな素材を用いた写真と映像を制作してきました。
2007年に発表したシリーズ「echos」は「USB Young Art Award」を受賞し、以降は、越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)、WROメディアアートビエンナーレ(ポーランド)などの国際展に参加するなど活躍の場を広げています。
近年、「個」の一つの事象に対する視点や認識が、近年の飛躍的な情報量の増加によって多視点と多様性を持つ筈にも関わらず、メディアによって作られた一つの捉え方や判断が、一件一件の事実とは無関係な画一的な認識へと定着している事柄について問題視しています。集団心理において、根拠が曖昧であるにもかかわらず、事実とは無関係に思考や言葉そして行動までもが同一方向へ加速度を増して一人歩きしています。
1979年 大阪市生まれ
2001年 ビジュアルアーツ専門学校大阪 写真学科卒業
[個展]
2018年
″つまり Please” nca | nichido contemporary art、東京、日本
2018年
″NEWoMan ART wall” NEWoMan、東京、日本
2017年
″何かによる、何かしらの、何かであって、そして何だか正しいらしい何か” Gallery PARC、京都、日本
2016年
″NEWoMan ART wall” NEWWoMan、東京、日本
2015年
″from one pxcel” ポーラ美術館、神奈川、日本
2015年
″Anagolism” C.A.P.神戸、兵庫、日本
2011年
″individuals” nca | nichido contemporary art、東京、日本
2008年
″double word” nca | nichido contemporary art、東京、日本
2008年
″echoes” Gallery RAKU、京都、日本
2006年
″a view from the view” VOICE GALLERY、京都、日本
2004年
″Those who go with me” VOICE GALLERY、京都、日本
[グループ展]
2023年
″AiF 入選作品コレクション 映像上映会” 藤沢市アートスペース、藤沢、日本
2022年
″Any Kobe” FLORE Artist Gallery、神戸、日本
2019年
″Artists in FAS 2019″ 藤沢市アートスペース、藤沢、日本
2013年
″small works” nca | nichido contemporary art、東京、日本
2013年
15th WRO Media Art Biennale 2013, ヴロツワフ、ポーランド
2012年
BIWAKO Biennale 2012, 滋賀、日本
2009年
越後妻有アートトリエンナーレ 2009 at FUKUTAKE HOUSE、新潟、東京
2009年
″visible and invisible” MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w、京都、日本
2008年
″Identity Ⅳ” nca | nichido contemporary art、東京、日本
2007年
″UBS Young Art” G27, チューリッヒ、スイス
2007年
″Masahito Koshinaka + Yukihiro Yamagami” baobab, 京都、日本
2007年
″into the photograph, out of the photograph” Third Gallery Aya, 大阪、日本
2005年
″ZONE-POETIC MOMENT” TOKYO WONDER SITE, 東京、日本
2004年
″Toyota Triennale 2004″ 豊田市美術館、愛知、日本
2001年
″field of field″ gallery Ren、京都、日本
2001年
″Mio Photo Award 2000 受賞者新作展″ Tennoji Mio、大阪、日本
2000年
″Mio Photo Award 2000″ Tennoji Mio、大阪、日本
[アーティスト・イン・レジデンス・プログラム]
2019年
″Artists in FAS 2019″ 藤沢市アートスペース、藤沢、日本
[受賞歴]
2000年 Mio Photo Award 2000優秀賞受賞
[奨学金]
2015年 ひょうご安全の日推進事業助成金、兵庫、日本
2013年 助成金給費 駐日ポーランド共和国大使館 広報文化センター、東京、日本
2007年 助成金給費 THE UBS ART COLLECTION、チューリッヒ、スイス
[コレクション]
国内外コレクション 多数
開催期間中トークショーとレセプション・パーティーイベントを開催
5月16日(木)から5月28日(火)の期間中、5月19日(日)には、京都芸術大学教授で環境デザイナーの早川克美氏をゲストスピーカーとしてお招きし、トークショーを行います。また、トークショーの後はレセプション・パーティーを開催いたします。
開催会場:ギャラリーQuadrivium Ostium
参加費:無料
◇スピーカー:越中正人(芸術家)、黒田幸代(Quadrivium Ostiumオーナー)
◇ゲストスピーカー:早川克美(京都芸術大学 教授、環境デザイナー)
(敬称略)
下記のメールアドレス宛に、件名「トークショー参加希望」、本文に「お名前」「当日のご連絡先」をご記載の上お送りください。
折り返しメールで返信いたします。なお、複数人数でお申込みの場合は連名の上お申し込みください。
定員に達した時点で締め切ります。あらかじめご了承ください。
・お申込み先メールアドレス s.kuroda@quadriviumostium.com (担当:黒田)
◆レセプション・パーティー:15:00~17:00 予約不要・出入り自由