トライバルラグのある暮らし 2025年12月5日(金)~12月14日(日)

日常と制作の境界を問う—
「藝術と生活の境界」タナベルンの絵画実践

【本展の見どころ】

キリムにはパワーがあると信じています。遊牧民の誇り高い民族アイデンティティがプライドを込めて織り込まれていること。大切な家族への愛情や大切なものを守るための祈りが織り込まれていること。神への厚い信仰心を織り込んでいることを考えればパワーが織り込まれているのは当然かもしれません。かのフロイトもキリムや絨毯の持つエネルギーを認めていたようで、精神科のカウンセリングの部屋には壁一面にキリムや絨毯が貼られていたといいます。 

酒井 忠宣

《アイマック族キリム ソフレ / 20世紀中期 / 143×121㎝ / 綾織・平織》

《イラン セネ キリム/ 19世紀後期~20世紀前期 / 145×107㎝ / 平織》

遥かな時を紡ぐ、暮らしに息づく美しい織物

トライバルラグは、インド北部からアフガニスタン、トルクメニスタン、トルコにかけての広大な地域で遊牧生活を営む部族民によって織られてきた伝統的な織物です。これらは商業目的で作られたものではなく、敷物、間仕切り、収納袋として、遊牧民の暮らしに欠かせない実用品として大切に織り継がれてきたもので、厳しい自然環境でのテント生活における必然性から生まれました。

母から娘へ受け継がれる祈りの織物
織物を織るのは主に女性たちの仕事でした。身近な動物や草木、星々といった自然をモチーフにしたプリミティブで力強い文様は、遊牧民の想像力と生命への畏敬の念を今に伝えています。 そして、酒井忠宣氏が語るように、母から娘へと受け継がれる織物の技術やこれらの伝統的な文様には、部族民の誇り高いアイデンティティ、家族への深い愛情、そして日々の暮らしへの祈りが織り込まれています。
《ヤムートトルクメン族 トルバ / 20世紀前期 / 67×32㎝ / ジジム織り・平織》
《テッケトルクメン族 エンシ / 19世紀後期 / 145×117㎝ / パイル織》
使い手への想い、素材との対話から生まれる「用の美」
トライバルラグの魅力は、日々の暮らしに使う実用から生まれた「用の美」にあります。無駄のない機能美と素朴な温もりは、柳宗悦が提唱した民藝運動の「使われてこそ美しい」という思想と深く響き合うものです。 民藝運動は、個人の作家性や芸術性を誇示するのではなく、名もなき職人たちが日々の暮らしのために作り出す日用品の中に真の美を見出そうとしました。使う人のことを想い、素材と対話しながら手を動かすことで生まれる健康な美しさ。それは作為のない自然な美であり、使われ続けることで一層輝きを増す美でもあります。 トライバルラグもまた、遊牧民の女性たちが家族の暮らしを支えるために織り上げた、まさに「民藝」の精神そのものを体現する織物なのです。
現代の暮らしに心の豊かさをもたらすトラバルラグ
長い時を経たトライバルラグには、作り手の想いと使い手の記憶が幾重にも重なっています。婚礼や人生の節目、神への祈りの場で用いられたトライバルラグは、確かなストーリーを持つものです。現代の暮らしの中に一枚のトライバルラグを迎え入れることは、奥深い豊かさを日常にもたらし、効率や利便性だけでは得られない心の充足をもたらしてくれます。 壁に掛ければ空間に深みと温もりを添え、ソファやベッドがある床に敷けば心安らぐくつろぎの場を演出します。また、小さめのものは食卓や棚に敷物としてしつらえることで、日々の食事やくつろぎの時間が特別なものへと変わります。 今展では、19世紀から20世紀前~中期にかけて織られた希少なアンティークラグが出品されます。 遥かな大地で織られ、長い時を旅してきたトライバルラグ。その一枚が、あなたの暮らしに新たな物語を紡ぎ始めます。
《バルーチ族 プレイヤーラグ / 20世紀前期 / 152×90㎝ / パイル織》
《テッケトルクメン族 ウェディングラグ / 20世紀前期 / 144×113㎝ / パイル織》

©佐藤佳乃子

酒井 忠宣 <民族布コレクター>

1987年 30歳の時に偶然、都内の街中のバーゲン会場で見つけたキリムを衝動買いする。      以来、キリムの魅力に取りつかれ収集を始める。
2017年 60歳で会社を定年退職。     
    それまで収集したコレクションを展示販売するキリム展を本格的に始める。
2018年 念願のイランへの渡航を実現。キリム生産の本場を訪ねる。
    自由が丘のキリム店にて常設展を始める。  
    以降、各地にて定期的にキリム展を開催。

【主な個展】
2025 「反復:B」 iGallery DC/山梨
2024 「反復:A」 Gallery U2/目黒
2023   画廊からの発言 -新世代への視点2023「#多分風景」 藍画廊/銀座
2020  「タナベルン展」 iGallery DC/山梨
2020  「#風景」 藍画廊/銀座
2019  「タナベルン展」 藍画廊/銀座

【イベント】「海と山と、それから」参加アーティストによるトークイベント[予約制]

テーマ :風景について 
参加アーティスト:稲垣美侑、タナベルン、山浦のどか 11月1日(土)18:30~20:00
会場;HUG FOR_.(鎌倉市由比ガ浜1-1-29 今小路ビル2F

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)  Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com

<タナベルン 過ごす>― 展覧会概要―
開催期間:11月1日(土)~11月23日(日)まで
休廊日:毎週 月曜・火曜
営業時間:11:00~18:00
予約:不要
入館料:無料

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)
Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com
【展覧会期間中:予約不要・展覧会期間以外は予約制】
水曜定休・ほか不定休 営業時間 11:00〜17:00

© Quadrivium Ostium
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