時任海斗 / Paradisus Ostium — 楽園の入口 2026年9月4日(金)~23日(水・祝)

時任海斗 — まだ見ぬ世界を掘り起こす

喪失の情動はいつの時代も、どの土地においても、人が人であるかぎり消えることのない普遍のものです。
石神雄介は、わたしたちの心の奥底でひそかに揺れ動くこの情動を、油彩に定着させながら、記憶をモチーフに、時間、土地と移動、無意識と意志の交差点を描き続ける画家です。

楽園への入口 / 910×727mm / 油彩、キャンバス / 2026

日常の隣に潜む「入口」

「ある住宅街を歩いていた折、庭先に佇む一頭の鹿とふと目が合った瞬間、時間が止まったように感じられ、見慣れているはずの風景が、突如としてまったく異なる世界への入口のように立ち現れた。」
タイトル「Paradisus Ostium ―楽園の入口」は、この体験に由来している。
今展覧会は、日常のその先にごく稀に訪れる、世界の見え方が反転するような瞬間を掴み取り表そうとする試みである。

充溢に満ちた記憶の糸を辿って

時任にとって、日常の中で感じる異なる世界の入口は森や自然の中にあった。
母の郷里である沖縄には、多くは森の中にひっそりと存在し、社殿を持たず、岩や木そのものを神の依り代とする聖域「御嶽(うたき)」がある。
時任は幼い頃から幾度となく沖縄を訪れ、その土地に触れてきた。
また、小学生の頃には、通学路を外れて森の中に足を踏み入れ、一見「何もない」はずのその場所が実は静かな充溢に満ちていることを肌で感じた経験があるという。
こうした幼少期の記憶から呼び起こされる、時任にとって日常と隣合わせにある「日常のその先の世界」は制作の重要なテーマとなっている。

色彩の深みを求めて

時任海斗の絵画は、目にした瞬間、目を見張る鮮やかな色彩によって特徴づけられる。
メイン作品「楽園への入口」は、グリーンとイエローが強く訴えかける熱帯の森を思わせる濃密で生命力に満ちた空間に覆われている。
いままでは、主にアクリル絵具を使っていたが、更に色味の深みと奥行きを表現するために最近は油絵具を使う試みをしている。
油絵具を使うことで筆の使い方も変化してきており、気の流れのような動きが出てきている。
また、画面には燃えるような赤い星のかたちをした閃光が配され、脚を大きく開いた黄色い獣が堂々と立っている。
こうした獣や鳥、木や森や植物は日常と異界のあいだをつなぐシンボルとして繰り返し立ち現れる。人工物をほとんど描かず自然のモチーフを取り入れるのは幼少期の経験によるものだという。
このように、時任が描く世界は、豊かな色彩と様々ないきもののかたちをしたシンボルたちが重力から解放されたように伸び伸びと存在する世界として顕われるのである。

新たな次元へ―画中画的表現の出現

画中にはアーチ状に切り取られた画中画のような空間があり、壺からたらいに水を注ぐ女性とそれを飲もうとしている角のある獣が描き込まれている。
そのモチーフは、古代ギリシャ絵画にある水瓶を持って井戸の水を汲む女性を思い起こさせ外界とは対照的な牧歌的な安らぎを感じさせる。
スポット的に異世界が展開する表現は、今展のテーマである「楽園の入口」にも関わるもので最近になって表われてきたものである。
時任の絵画は、時間軸や時空を超越する世界のさらに奥の次元へと展開しつつある。

制作とは―まだ見ぬ豊かな世界を掘り起こす

時任にとって絵を描くことは、「地中深くにある何かに向かって、スコップで穴を掘り続けるような行為」であるという。
穴の深さや評価の基準にとらわれるのではなく、自分にしか掘ることのできない、ある固有の「かたち」を掘り進めていくこと。
その先に、思いがけず大きな岩が外れ、深く豊かな空間が姿を現すことを期待しながら日々キャンバスに向き合っている。
今展覧会は、そうした独自の探求から生まれた作品から、鑑賞者一人ひとりが日常の風景のなかに潜む「楽園の入口」を見出す体験をもたらすだろう。

文責:Quadrivium Ostium 黒田幸代

友のために / 403×303mm / 油彩 、キャンバス / 2026 

drawing / ペン、紙 / 2021

ステートメント

身体的な経験を通じた記憶や、イメージの残滓を手がかりにして、絵画を中心とした制作をしています。
その中で、人とは何であるか?
「私がある」とはどういうことか?を問い続けています。
場所や出来事との繋がりの中で、どのように私個人と社会が形成され、関係していくのか。
時間や空間は「私」という感覚を通じてどのように規定されるのか。
そして、それらはどの程度の可塑性を持つのか。
私はこのような認識の問題を読み解き・書き換えることができる媒体として、絵画と言葉、それらによって作られる空間の可能性を探求しています。

©佐藤佳乃子

石神雄介 / Yusuke Ishigami

1992 沖縄で生まれ 福岡で育つ
2019 木村創作室で絵を学ぶ
2024 SHIBUYA AWARDS
2024 審査員賞(小山登美夫賞)、オーディエンス賞

【個展】
2026  「Shovel & Hole」FEEL SEEN KOBE、FEEL SEEN GINZA
2025  「SANSUI」FEEL SEEN KOBE、FEEL SEEN GINZA 、 POETRY READING (博多)           「ELLIPTICAL PLANET EP.0」THE COFFEE BREW CLUB(ハラカド)
     「Light Falls」ギャラリ想(名古屋)
2024  「Lamp Lights」GALLERY MAGNET Alley(神戸北野)
     「すばらしい世界」枚方T-SITE   
     「たとえばノスタルジア」FEEL SEEN KOBE、FEEL SEEN GINZA、POETRY READING (博多)   
     「たとえばユートピア」東京十月
2023  「Silence Fiction」FEEL SEEN KOBE、FEEL SEEN GINZA、POETRY READING (博多)
2022  「発光体のゆくえ」FEELSEEN KOBE、FEELSEEN GINZA、POETRY READING ( 博多 )

【その他】
2024年 大和ハウス テレビCM 作品提供
2022年 Cocco アルバム「プロム」ブックレット内 アートワーク

【開催概要】
2026.9.4(金)~23(水・祝)12:00~17:00
休廊:火・水・木(9/8、9、10、15、16、17)

【イベント】
誰でも作品が描けるようになる  ドローイングクラスDrawing Time

【イベント】
誰でも作品が描けるようになる
ドローイングクラスDrawing Time

描いた作品を冊子にまとめて、世界にひとつだけのZINE(ジン)を作ります。
ZINE(ジン)とは自分の好きなものを表現した制作物をまとめた冊子のことです。
毎回、モチーフを決めて制作。ペンやオイルパステルなどを用いて描いたりコラージュに取り組んでいます。 描くにあたり、様々なアプローチをしながら段階を踏み、 徐々に自分だけの表現ができるようになることを目指します。日常から離れて、 制作に没頭する心地よさを共有できたらと思います。
画材をご用意してお待ちしております!
【開催日時】
9/5(土)、9/6(日)14:00~16:00
【参加費】
1人 3,520円(税込)
【お申込み】
s.kuroda@quadriviumostium.com
上記宛に、お名前(複数人の場合は代表者名)、人数、当日の連絡先電話番号を記載の上お送りください。代金は当日、現金でお支払いをお願いいたします。

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)  Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com

<タナベルン 過ごす>― 展覧会概要―
開催期間:11月1日(土)~11月23日(日)まで
休廊日:毎週 月曜・火曜
営業時間:11:00~18:00
予約:不要
入館料:無料

株式会社Quadrivium
〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺5-4-32
Tel:080-5430-6641 (黒田)
Mail:s.kuroda@quadriviumostium.com
【展覧会期間中:予約不要・展覧会期間以外は予約制】
水曜定休・ほか不定休 営業時間 11:00〜17:00

© Quadrivium Ostium
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